2021年2月23日更新
目次
新築マンション市場の現状
新型コロナウイルスは、首都圏および近畿圏の新築マンション市場に少なからぬ影響を与えました。コロナ禍で営業活動と新規物件の供給が十分にできなかったことに加え、在宅勤務の浸透により顧客側の意識も変化したことから、求められる物件にも変化が起きつつあります。
2020年上半期の新規分譲マンションの供給は、首都圏で7497戸(前年同期比で44.2%減)、近畿圏で5299戸(同29.5%減)となり、全体として大幅な減少になったことが示されました。これは、新型コロナウイルス対策としての外出自粛要請などもあり、4月からの3カ月間は、販売活動が実質的に停止したことによるものです。
一方で、最近は株式市場が30,000円をつけることからもわかるように、パンデミックで経済を失速させないために、世界中でお金がバラまかれ、結果として、市場ではお金がジャブジャブの状態となっています。そのことは、株式市場のみならず不動産市場の下支えにもつながっています。
不動産価格は上昇を続け、居住面積は狭くなっている
特に不動産市場においては、毎年地価が上昇し続けています。
・首都圏
価格:平均6668万円(同11%アップ)、
面積:平均64.68平方メートル(同4.9%縮小)
1平米あたり単価:103万円(同17.3%アップ)
・近畿圏
価格:平均4602万円(1.0%低下)
面積:68.71平方メートル
1平米あたり単価:67万円
特に首都圏においては、価格が上昇し、居住面積も縮小しています。
地価が上昇し続けていることを考えれば、当たり前のことですよね。施工業者が昨年と同じ規模のマンションを供給するにしても、土地の取得費(つまりコスト)が増えるため、同じ面積の敷地で昨年と同じ戸数を供給すると利益は少なくなります。したがって、一戸あたりの面積を縮小して供給戸数を増やすしかありません。
例えば、昨年、全体敷地面積500の広さのところに7戸の物件を供給したのを、今年は同じ全体敷地面積500で8戸の物件を供給する。そうすると1戸あたりの供給面積は縮小する、そういったカラクリです。
マンションの販売業者は、来場客にこのような実情を直接的には話しません。どう説明するかというと、
「多くの方の生活スタイルが変化してきています。つまり、ひと昔前のような大家族時代ではなくなってきているため、3LDK で60㎡台くらいが、広すぎないことでデッドスペースが生まれず、快適な生活を実現できています」
決して、地価が上がっているから居住面積が縮小しているとは言いません。
こうした現状を踏まえ、どのような新築マンションが買われる傾向にあるのでしょうか。
ポイントは「安心、遠い、広い」
これからの時代の住まい選びに置けるキーワードは「安心、遠い、広い」です。
「安心」は、新型コロナウィルスへの感染リスクが低く、安全・安心に暮らせるマンションであることを意味します。「遠い」は、在宅勤務の定着で職場より遠くてもOKという人が増えているという点。「広い」は、在宅勤務するためのワークスペースや、家族がくつろげる一定の広さが求められるということです。
まず「安心」についてです。
最新のマンションでは、人との接触機会を減らすための様々な工夫がなされています。例えば宅配ボックス。これがあれば宅配便を人と接触することなく荷物が受け取れます。最近では、大手デベロッパーがメールボックスに全戸宅配ボックスを設置するマンションを増やしていますし、各戸の玄関に宅配ボックスを設置する動きもあります。
他にもエレベーターのボタンを非接触にしたり、ハンズフリーでドアを開けられたりもできるようになってきています。
次に「遠い」についてです。
コロナ禍の影響で、在宅勤務が定着し、会社には月に1、2回あるいは月に数回ほど出社すれば良いという人が増えています。中にはオフィスを縮小・廃止して、在宅勤務のみに切り替えるといったケースもあります。
正社員として働いていても、会社の近くにこだわる必要はなく、都心から遠く離れた場所に住まいを確保しても支障がなくなってきているのです。中には、地方の実家の近くに引っ越したり、海岸沿いのリゾート地や田園地帯に引っ越して、仕事と趣味の両立を図ろうとする人もいるでしょう。
今後、都市部でなく郊外でも全く問題がないという人が、ますます増えてくるのではないでしょうか。
最後に「広い」についてです。
もともと日本の住まいのほとんどは、家の中で働くことが前提になっていませんでしたので、仕事スペースのようなものはなく、本当に住むためだけのものでした。しかし、コロナ禍での在宅勤務の増加によって、住まいの広さが求められるようになってきました。リモートワークでは、たびたび会社とのWeb会議が行われることから、自宅内の静かなスペース確保が必須です。そうすると、現状の住まいでは十分ではなく、仕事部屋として、もう1部屋欲しいところです。
結論
コロナ禍での住まい選びについて、広さと駅からの近さのどちらを重視しますかという調査(第2回 コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査)がありました。
*資料
その中で、半数以上の人が、多少遠くなっても広い住まいを求めていることが結果として示されています。都市近郊は確かに利便性が魅力ですが、昨今の地価上昇で、居住面積も狭く、高額なマンションに住むくらいなら、「安くて安心で、遠くて、広い」物件を検討する人が増えてくるのではないでしょうか。
これからのマンション選びは「安心、遠い、広い」が基本になるかもしれません。マンション市場の動向では、コロナ禍で土地取引が停滞し、これまでならホテル用地として落札されてきた土地が、ホテル業者の撤退によってマンション業者がそれに代わって取得してきていると言われています。
こうした流れが続けば、時代のニーズに対応した「安心、遠い、広い」のマンションが増える可能性があり、今後の動向が注目されます。