全固体電池 ーリチウムイオン電池の次の本命ー

2021年2月28日
2021年2月28日更新

「全固体電池」という言葉をご存知でしょうか?

新聞でも取り上げられることが多くなり、耳にしたことがある方は多いかもしれません。

実は全固体電池は、電気自動車(EV)電池の主流であるリチウムイオン電池の次の本命とされています。電気自動車の性能を飛躍的に高め、一気に主役に躍り出る可能性があり、今まさに電池業界で技術革新が起きようとしているのです。

本格的な電気自動車(EV)の普及に、現状のリチウムイオン電池ではなく、全固体電池の開発に期待が寄せられているのかを簡単に解説していきたいと思います。

目次

そもそもリチウムイオン電池とは

全固体電池の解説の前に、まずリチウムイオン電池についてレビューしていきたいと思います。

リチウムイオン電池は、旭化成の吉野彰(2019年ノーベル化学賞)らが、炭素材料を負極とし、リチウムを含有するコバルト酸リチウムを正極とする新しい二次電池、いわゆるリチウムイオン二次電池 (LIB)の基本概念を確立しました。

これにより、それまでのバッテリーと比べてエネルギー密度が高く、同じサイズでより大きな電池容量を実現しました。

スマートフォンやノートPC、タブレット、デジタルカメラ、携帯音楽プレイヤーなど、さまざまなモバイル機器の稼働時間が増え、人々のライフスタイルを大きく変革させた画期的な電池でした。

リチウムイオン電池の仕組み

 

【リチウムイオン電池の特徴】

(1)電圧が高い
同じ小形二次電池であるニカド電池やニッケル水素電池の 1.2V に比べると 約3倍の電圧が得られます。直列接続して同じ電圧を出すとすれば、使用本数 が1/3で済みます。

 

(2)エネルギー密度が高い
リチウムイオン電池の重量エネルギー密度と体積エネルギー密度は、 他の電池に比べて最も大きい。重量エネルギー密度は 、単一のニカド電池の約5倍、ニッケル水素電池の約3倍になります。

つまり、リチウムイオン電池は、同じエネルギーに対して最も小さく、最も軽い二次電池であることが分かります。小型軽量でエネルギー密度の大きい電池として構 成できるので、モバイル機器の電源として使用することができます。

 

(3)サイクル寿命が長い
電池は充放電を繰り返すことよって次第に劣化していきます。リチウムイオン電池のサイクル回数は3,500回、年数にしておよそ6~10年となっています。

ノートパソコンや携帯電話などのモバイル機器用バッテリーに必ず用いられるリチウムイオン電池。近年では、家庭やオフィスに設置する蓄電池としても普及が進んでいる他、大規模施設に向けた大容量化などの開発が推進されています。

 

 

しかしリチウムイオン電池には欠点がありました。

【リチウムイオン電池の欠点】
(1)発火のリスクが高い
(2)温度によってリチウムイオン電池の充電・放電の性能が左右される

 

スマートフォンが発火したとのニュースを一度は聞かれたことはあるのではないでしょうか。それは、リチウムイオン電池の欠点が原因によるものです。そして、それらを克服するための技術が、全固体電池です。

全固体電池とは

全固体電池とは、リチウムイオン電池で用いられている電解質と呼ばれる液体を固体化したものです。

電解液を使わず電極間を固体でつなぐのが特徴です。
充放電時に、リチウムイオン電池では電極間をイオンが移動しますが、全固体電池では固体の中をイオンが移動します。固体の中は移動しにくいイメージがありますが、特殊な硫化物を使用することで、液体の電解質と同等かそれ以上の伝導性を持たせています。

ちなみに電解液とは、正極と負極(電極)間で電気をやりとりするための電気を通す液のこと。

p2[1]

 

特徴1 飛躍的な性能向上
全固体電池は、理論的にはエネルギー密度(質量当たりの充電量)をリチウムイオン電池より高くできる可能性があります。また、固体電解質や電極の性質から充電時間が数分程度(リチウムイオン電池は数十分~数時間)と、ガソリンスタンドでの給油並みに短くできる可能性があります。これってすごくないですか。
*エネルギー密度が高い・・・小さな電池に大きな電力を蓄えることができること

特徴2 安全性の向上
リチウムイオン電池と比べ、電解液を使わないため燃えにくく、劣化による発火のリスクが小さいのが特徴です。

特徴3 温度による性能の不安定さが無い
リチウムイオン電池は、温度の影響による性能の不安定さが欠点でしたが、全固体電池では氷点下の低温や水沸点(100℃)に近い高温でも性能の低下が起こりにくいとされています。

特徴4 劣化しにくく長寿命
現状のリチウムイオン電池では、電解質の劣化(分解)や電極活物質の劣化などの「副反応」によって劣化しやすい特性がありますが、固体電解質では副反応が起こりにくく、より長寿命の電池が実現できることが期待されています。

 

つまり、安全性・耐久性を確保しつつ、高エネルギー密度化・高出力化が実現できるのです。

 

それでは、この全固体電池は、主にどういった用途で使われることが期待されているのでしょうか。一つは、小型の「酸化物系」のもので、電子デバイスなどに使われます。もう一つは、大型の「硫化物系」のもので、主に電気自動車(EV)に使われます。中でも電気自動車(EV)での活用が、特に期待されています。

全固体電池は次世代電気自動車(EV)開発のキーファクター

EV

世界の自動車メーカーが進めるのは、「電気自動車(EV)へのシフト」です。

トヨタ自動車は、全固体電池の世界特許出願件数がこの10年(2011〜2020年)で901件と、他社を圧倒しています。

また、現在世界第2位の自動車市場である中国は、自動車メーカー各社に対して2019年以降、電気自動車(EV)を中心とする「新エネルギー車」を一定割合で生産・販売するよう義務付ける新規制を公表しています。

そして、なんと1社の時価総額で「日本の上場自動車メーカーの合計」を超えてしまったEVメーカーの米テスラが、コストの3割を占めるとされる車載電池を自社生産し、生産コストをほぼ半減させてガソリン車より安いEVを開発する目標を掲げました。

現在は日本が先頭を走っていますが、中国と米国が猛追しているといった構図になっています。

各社が開発を急ぐ理由は、次世代EVのデファクト・スタンダード(事実上の標準)を確立したいからです。「全固体電池は、高級車から順に搭載されると予想され、一般車向けの量産化にはさらに5年かかる」とみられています。世界の全固体電池市場は20年で34億円ですが、35年にはなんと2兆1000億円程度となると予想されています。

今後、電気自動車が急速に主流となるのは間違いありません。

全固体電池関連の注目企業

日立造船(7004)は、これまで硫化物系全固体電池を開発してきました。つい最近では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と世界初となる宇宙での全固体リチウムイオン電池の実用化に向けた実証実験を2021年に開始することで、共同研究契約を締結したと発表しました。

主な銘柄は、EV向け電池生産を手掛ける合弁会社を設立したトヨタ自動車(7203)パナソニック(6752)、主に小型のIoT・ウェアラブル機器向けの「酸化物」全固体電池を開発している村田製作所(6981)のほか富士フィルムHD(4901)TDK(6762)太陽誘電(6976)ジーエス・ユアサ コーポレーション(6674)日本電気硝子(5214)出光興産(5019)など。

また注目度の高い中小型銘柄としては、表面実装部品(SMD)対応小型全固体電池「SoLiCell」を生産するFDK(6955)、全固体電池製造の米スタートアップに出資する三櫻工業(6584)、19年9月から硫化物系固体電解質を使用したコイン形全固体電池のサンプル出荷を行っているマクセルホールディングス(6810)が注目です。

 

その他の記事は、Classical Tasteブログの「投資・運用」

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